このページでは数教育について書いています
モンテッソーリ教育の数教育のねらい
人間として生まれてきたものはみな、一人残らず生まれながらに数学的な精神を持っている。
(「創造する子ども」M・モンテッソーリ)
数学的な頭脳と精神を育てる
小さい子どもはひも通しが大好きです。
気がついたら赤だけ、青だけ、黄色だけ…というように、色ごとに分けて入れていたりします。
ところが、生活が落ち着いていないと、色もバラバラに入れます。
生活が安定していると、子どもは自然に分類することができます。
ですから、子どもの数学的な発達には、まずは生活が落ち着いていることが大切です。
子どもが持っている分類する能力
小さな子どもは分類する力をすでに持っています。
この感覚を「秩序感」といいます。
- ブロックを色ごとに分けて片づける。
- 石を大きいものから小さいものの順に並べる。
- 葉っぱを色や形に分ける。
- 積み木やブロックを箱にぴったり美しくおさまるようにしまう。
こんな風に、大人が何も言っていないのに、気が付いたらこどもが勝手に色や大きさの順に並べたり分けたりしているのを見たことがあると思います。
子どもには生まれながらに分類する力が備わっており、「分ける」というのはとても大切な思考力です。
正確さを養う
正確さを求めた方が子どもは集中して活動できます。
たとえば、シール貼りをするときには枠があったほうがよいですし、水のあけうつしは線があったほうがよいです。
「枠に合わせてぴったり貼る」
「線までぴったり水を入れる」
というように、自由にさせるより制限があった方が子どもも活動しやすいのです。
行動を秩序づける
大人の仕事でも同じですが、事前準備や段取りがどれだけできているかで、スムーズに行動できるかが違ってきます。
順番にやらないとうまくいかない
↓
順番にやるとうまくいく
たとえば、道具がたくさん必要なお仕事では、適当な順番で重ね、適当に机の上に置くと、途中でスムーズにできなくなります。
順序良く道具を持ってくることで、そのあとの活動もスムーズにできます。
動作はゆっくりでかまわないので、無駄な動作をなくすことが大切です。
幼児期に数学は発達させることができない
数学的なものは、花や虫のように目には見えません。
数学的なものは「抽象的」なものです。
だから、幼児期に数学的に発達させることはできないのです。
そのため、モンテッソーリ教育では感覚教材を抽象化することで、幼児期に数学的な発達を助けます。
幼児期には抽象的な数字を扱う前に、感覚的な活動ををたくさん行ってください
感覚教材のねらい
モンテッソーリ教育の感覚教材では、大切な思考力を育てます
同一の発見
ペアリング(同一性)と呼ばれます。
たくさんある中から「同じ」を探します。
たとえば、雑音筒では「同じ匂い」を、ざら板合わせでは「同じ触覚」を、色板では「同じ色」を複数ある中から探します。
序列の発見
グレーディング(順序性)と呼ばれます。
「長い順」「大きい順」「太い順」「濃い順」などの順番になるように並べます。
たとえば、色板では「濃い順から薄い順」に、赤い棒では「長い順から短い順」に並べます。
代数や幾何
「二項式の箱」や「三項式の箱」で代数の感覚を、「幾何立体のかご」や「幾何たんす」で幾何の感覚を養います。
数の土台となる2つの秩序感
子どもが数について理解できていても、生活が安定していないと子どもは正確にできません。
そのため、数の前に生活を大切にしなければいけません。
生活の中での大切な秩序が2つあります。
「空間的秩序」と「時間的秩序」です。
空間的秩序
物の位置が一定であるということです。
特に、0~3歳の子どもは強い秩序の敏感期であり、いつも「同じ」であることによって安心して生活することができます。そのため、大人の都合によって場所を変えるのは好ましくないとされています。
こどもが使いやすい環境、配置をよく考えることが大切です。
そのために子どもをよく観察し、一度決めた場所はできるだけ変えないようにしたほうがよいでしょう。
子どもにとって最良な環境をつくることができたら、その秩序を保てるように子どもに働けかけましょう。
時間的秩序
1日の流れがいつも一緒であるということです。
大人が流れを決めてしまうと、見通しがたたないので子どもは時間を暇つぶしに使うようになります。
時間の見通しがたたないと、ふらふらしたり、終わりが早く見える活動など、深く活動することをしなくなってしまいます。
できるだけ同じような一日の流れで過ごすようにし、おでかけなどのイベントは曜日で決めるとよいでしょう。
この「空間的秩序」と「時間的秩序」が数の土台となります。
このようなことから、
・こどもが数を発達させるためには生活が安定していることが大切
・数は目に見えない抽象的な概念なので、感覚教材にたくさん触れることが大切
生活と感覚を十分に行ってから、数の世界が開かれます。
子どもの数学的頭脳の発達を助けたいと思ったら、まずは安定した生活の中で、感覚的な活動をしてあげてください。