生活と同じくらい大切にしたいのが「感覚」です。
このページでは、感覚教育について書いています
感覚教育のねらい
生まれてからの子どもは、目・耳・口・鼻・手という感覚器官を使って自分の周りの世界を吸収しています。
そして、子どもはたくさんの体験の中から、大きい・小さい・高い・低い・重い・軽い…などの抽象概念を作り上げます。
複数のものの中から共通の要素を取り出すことを抽象化と呼び、この抽象化する力は人間だけのものです。(→抽象化思考)
抽象化ができるかどうかは、小学生以降の学習や大人になってからの仕事に関わります。
抽象的な思考力は、幼児期の過ごし方に関わっています。1
1 知性への橋渡し
子どもが生まれてから今までに感覚的に体験してきたことを整理し体系づけて、知性への橋渡しをします。
0歳~3歳までに無意識に吸収した環境を、3歳~6歳の子どもは意識的に吸収します。(→無意識的・意識的吸収精神)
子どもは3歳ごろからそれまで感覚的にたくわえてきた体験を整理し、抽象的な概念をとらえるようになります。
感覚教具は、子どもが抽象概念をたやすく理解できるように手助けをします。
2 子どもの感覚を洗練させる
子どもには感覚を洗練させるための敏感期があります。(→敏感期)
感覚教材によって、子どもは正確に、色、高さ、長さ、大きさ、太さ、音などの識別ができるようになります。
これらの感覚的な基盤は、子ども達の創造と、抽象概念を築く土台となります。
3 数学的な感覚を養う
感覚教具は10個を基本に作られています。
ピンクタワー、茶色の階段、赤い棒などは、最小のものから最大のものまで1cm刻みになっています。
それらの教具を、バラバラにして積んだり並べたりしていくことが、数学的な感覚を養う助けになります。
4 集中作業へのきっかけを与える
集中は子どもを思考へと導きます。
繰り返される練習は一定の能力が獲得されるまで続きます。
興味によって引き起こされる集中は、
注意→関心→活動→集中→黙想→変容
のサイクルをくり返します。
集中が生まれると、黙想を通じて子どもは変容します。
感覚教具は敏感期の子どもにとって非常に魅力的なものであり、集中作業に向かうきっかけとなります。
モンテッソーリの感覚教具の特徴
1 ただ一つの性質を浮き立たせてある
感覚教具は、こどもがその教材の特定の性質に焦点をしぼれるように作られています。
これを「感覚の孤立化」といいます。
刺激を孤立させることによって、ある特定の性質がとらえやすくなります。
たとえば、「赤い棒」は、色、幅、厚みがすべて同じで、違うところはそれぞれの棒の長さだけです。
子どもの心は長さ以外の特質について、「心理的な盲目状態」になります。(→どんな力を身につけさせたいのか?)
2 子どもが手を使って扱いやすい大きさである
幼児期の子どもは、手を使って吸収します。
そのため、子どもの手で抜いやすく、使いたくなるような大きさに設計されています。
3 子どもの心に入る大きさになっている
どの感覚教具も、こどもにとって魅力的な大きさに作られています。
たとえば、赤い棒は短すぎても長すぎても子どもの心に入っていきません。
4 誤り訂正が教材に含まれている
大人がまちがいを指摘するのではなく、教具自身が教えてくれるように作られています。
子どもはまちがいを自分で発見し、自己訂正することができます。(→レジリエンス)
5 美しい
美しいものは子どもの興味関心を引き出し、触りたくなります。
モンテッソーリ教育の感覚教具は調和がとれており美しく、子どもにとって魅力的に見えるようになっています。
6 量的に制限されている
多すぎるとどれも十分にくり返すことができません。
本物をくり返し行うことが大切です。
7 ある特定の年齢の子どもを対象に作られている
子どもの発達の中には敏感期と呼ばれる時期があり、その時期の子どもが興味をもつように作られています。
感覚教具は、3歳までに多くの体験を積んできた子どもに、それまでの感覚を整理する手助けをします。
6歳までの子どもには様々な敏感期があります。
その時期は子どもによって違うので、教師はよく観察し、時期を逃さないようにすることが求められます。
子どもによってどのくらいの期間するか、どのくらいの回数をするかも違うからです。
感覚教具をたくさん行うと心の中が整理されるので、できるだけたくさん誘うとよい、とされています。
感覚教具の中でも、手作りをしたり自宅で取り入れやすいものもあります。
・五感を意識した活動を行う
・できるだけ1つの感覚が感じられるように工夫する
・子どもにとって魅力的なものを用意する
これらのことを意識して、日常のなかで五感を使った活動をお子さんと楽しんでみてください。